乾燥している手を見るにつけて
わたしはいつも宅配便の受け取りを土曜の午前に指定する。
そうすれば、宅配便が来るまで寝ていられるという大義名分が生まれるから。
土曜日の朝のアラームは、宅配便のビンポンの音。
だから慌てて起きて荷物を受け取りに玄関に出るんだけど、
たいてい寝起きでひどい顔をしてるから、宅配便のお兄さんの顔は見れなくて
いつもその人たちの手元ばかり見ている。
今は冬だからか、その人たちの手は決まって寒そうで乾燥していて
思わずニベアを塗りたくなるような、そんな感じ。
彼らの爪は短く切られていて、わたしはいつもそれがなんだか愛しくて
この人は今どんな表情をしてるんだろうと見たくなるんだけど
自分のひどい顔を見せたくなくて、顔を上げられないわけです。
宅配便がドローンになったら、深夜でもどこでも受け取れるようになって
きっとたいそう便利なんだけど、
この手を見れなくなると思うと少し寂しい。
便利になるということは、
小さな感情たちの生まれる場がなくなるということなんじゃないか。
そう思うと、もう少し時代に足踏みしてほしい気持ちになる。